【比較】S3 Vectors / Bedrock Knowledge Bases / OpenSearch の違い¶
概要¶
AWS で RAG(Retrieval-Augmented Generation)基盤を組むときに必ず混乱するのが、Amazon S3 Vectors・Amazon Bedrock Knowledge Bases・Amazon OpenSearch Service の3つです。「どれを選べばいいか」と聞かれることが多いですが、実はこの3つは 同じレイヤーの選択肢ではありません。
- Bedrock Knowledge Bases … RAG パイプラインを丸ごとマネージドにする「上位サービス」(ingestion / chunking / embedding / retrieval API を一括提供)
- S3 Vectors … Bedrock KB が裏で使う「ベクトル保管庫」の一種。2025年12月に GA、ベクトル特化のストレージ・クエリ層(最大90%安い)
- OpenSearch Service … 全文検索+ベクトル検索ができる汎用検索エンジン。Bedrock KB の裏側にも採用可能(OpenSearch Serverless)
つまり Bedrock KB を 「RAG オーケストレーター」 と捉え、その裏のベクトル保管に S3 Vectors か OpenSearch を選ぶ、という二段構えで考えると整理しやすくなります(さらに pgvector や Pinecone も選べます)。本記事は 2026-05 時点 の最新仕様で違いをまとめます。
詳細比較¶
| 項目 | S3 Vectors | Bedrock Knowledge Bases | OpenSearch Service |
|---|---|---|---|
| レイヤー | ベクトル保管(Storage層) | RAG オーケストレーション(上位サービス) | 検索エンジン(Storage+検索層) |
| 主用途 | 大量ベクトルの低コスト保管・検索 | RAG パイプライン全体の自動化 | 全文+ベクトル+ハイブリッド検索/ログ分析 |
| GA 時期 | 2025年12月 | 2023年(KB機能) | 2021年(OpenSearch)/Serverless 2023 |
| 課金単位 | PUT(GB) + Storage(GB-月) + Query($/Mリクエスト+$/TB) | KB自体は無料。裏のベクトルストア+埋め込み+parsing が別課金 | プロビジョン: インスタンス時間。Serverless: OCU($0.24/h) |
| 最小コスト目安 | クエリ依存(保管だけならほぼ0円スタート可能) | 裏のストア依存(S3 Vectors なら最安、OpenSearch Serverless なら下記) | Serverless 本番最小 約$350/月(4 OCU)、dev-test で半額 |
| スケール上限 | 1インデックス 20億ベクトル / 1バケット 20兆ベクトル | 裏のストア依存 | k-NN 最大 16,000次元、ノード追加でスケール |
| クエリレイテンシ | Cold sub-second / Warm 〜100ms | 裏のストア依存(S3V: warm 100ms / OS Serverless: 数十ms) | プロビジョン: 数ms〜数十ms / Serverless: 〜100ms |
| ハイブリッド検索(全文+ベクトル) | ❌(ベクトル特化) | ✅(裏が OpenSearch のときのみ) | ✅(BM25 + k-NN + rerank) |
| マルチモーダル対応 | ✅(GA時にtext/image/audio/video の埋め込み保管が可能) | ✅(2025 re:Invent で multimodal retrieval 追加) | ✅(埋め込みを自前で投入する場合) |
| 東京リージョン | ✅(2025-12 GA時に追加) | ✅ | ✅ |
| 運用負荷 | 低(マネージドストレージ) | 最小(フルマネージドRAG) | 中〜高(プロビジョン管理 or Serverless OCU 管理) |
| Bedrock KB との関係 | KB の vector store として選択可(推奨デフォルト) | KB そのもの | KB の vector store として選択可(従来デフォルト) |
📅 取得日: 2026-05-20。AWS の機能・価格は変化が速いため、本番採用時は必ず一次ソース(後述「出典・参考」)で再確認してください。
よくある誤解¶
誤解1: 「S3 Vectors vs OpenSearch でどっちを選ぶか」¶
両者は 直接の競合ではなく、Bedrock KB の裏側で どちらを使うか の選択肢です(pgvector / Pinecone / MongoDB Atlas / Redis Enterprise も候補)。フラットに「どっち?」と考えるよりも、「Bedrock KB を使うか/使わないか」「ハイブリッド検索が必要か」を先に決めるのが正解です。
誤解2: 「Bedrock Knowledge Bases は単独で課金される」¶
KB 自体には別途料金は発生しません。料金が発生するのは:
- 裏側のベクトルストア(S3 Vectors / OpenSearch Serverless 等)
- 埋め込みモデルの推論(入力トークン課金)
- Bedrock Data Automation での parsing($0.010 / page)
- Amazon Rerank 1.0($1.00 / 1,000 reranking queries)
「Knowledge Bases 自体は無料、選んだストアと埋め込みが課金対象」と覚えると良いです。
誤解3: 「OpenSearch Serverless は安い」¶
サーバーレスでもベクトル検索は 最低 4 OCU = 約 $350/月 が発生します(dev-test なら半額)。これは「使わなくても発生する固定費」なので、トラフィックが少ない小規模 RAG では S3 Vectors の従量課金のほうが圧倒的に安くなります(AWS 公式で 最大90%コスト削減)。
誤解4: 「S3 Vectors は安いが性能が劣る」¶
GA 後の S3 Vectors は warm クエリで 100ms 前後 のレイテンシが出るため、対話型 RAG でも十分実用域です。ただし数 ms 単位のリアルタイム要件(広告配信・レコメンドのインライン推論)には OpenSearch プロビジョンのほうが向きます。
実務での選び分け¶
flowchart TD
A[ベクトル検索が必要] --> B{RAG パイプラインを自分で組む?}
B -- いいえ・マネージドが欲しい --> C[Bedrock Knowledge Bases を採用]
C --> D{裏のストアは?}
D -- 大量データを安く保管<br>新規案件・低トラフィック --> E[S3 Vectors]
D -- 全文+ベクトルのハイブリッド検索が必須<br>or OpenSearch 既存資産あり --> F[OpenSearch Serverless]
D -- リレーショナル DB と統合 --> G[Aurora pgvector]
B -- はい・自前で組む --> H{要件は?}
H -- 純粋なベクトル保管・低コスト最優先 --> I[S3 Vectors 単体]
H -- 検索+分析+ベクトル全部 --> J[OpenSearch Service]
H -- 数ms レベルのリアルタイム --> K[OpenSearch プロビジョン]
判断軸の早見表¶
| こういうとき | 推奨 |
|---|---|
| 小規模 RAG・PoC・コスト最優先 | Bedrock KB + S3 Vectors(AWS公式が2026年の新規案件デフォルトとして推奨) |
| 既存 OpenSearch クラスタに RAG を相乗り | Bedrock KB + OpenSearch Serverless |
| 全文+ベクトルのハイブリッド検索が必須 | OpenSearch Service(プロビジョン or Serverless) |
| 数ms 単位のレイテンシ要件(広告・レコメンド) | OpenSearch プロビジョン(インスタンス常時稼働) |
| 大量・低頻度クエリで保管コスト最重要 | S3 Vectors 単体(20億ベクトル/index・最大90%安) |
| アーキテクチャを自前で組みたい | S3 Vectors または OpenSearch 単体(Bedrock KB は使わない) |
| マルチモーダル(画像・音声・動画)RAG | Bedrock KB(2025 re:Invent で multimodal retrieval 追加) |
ひとことまとめ¶
Bedrock Knowledge Bases は「RAG の司令塔」、S3 Vectors と OpenSearch はその「保管庫の選択肢」です。2026年の新規案件は Bedrock KB + S3 Vectors が AWS 公式の推奨デフォルト(既存 OpenSearch 資産またはハイブリッド検索が必須でなければ)。3つを「同列の選択肢」と捉えると混乱するので、まず Bedrock KB を使うかを決め、次に裏のストアを選ぶという二段構えで考えるのがおすすめです。
出典・参考¶
📅 全リンク取得日: 2026-05-20
- Amazon S3 Vectors(AWS 公式ページ)
- Amazon S3 Vectors now generally available with increased scale and performance(AWS Blog, 2025-12)
- Amazon S3 Vectors is now generally available with 40 times the scale of preview(AWS What's New, 2025-12)
- Using S3 Vectors with Amazon Bedrock Knowledge Bases(AWS 公式ドキュメント)
- Amazon Bedrock Pricing(AWS 公式)
- Amazon OpenSearch Service - Pricing(AWS 公式)
- Vector Database for Amazon OpenSearch Service(AWS 公式)
- k-Nearest Neighbor (k-NN) search in Amazon OpenSearch Service(AWS 公式ドキュメント)
- AWS claims 90% vector cost savings with S3 Vectors GA(VentureBeat, 2026-01)
- Amazon S3 Vectors Reaches GA, Introducing "Storage-First" Architecture for RAG(InfoQ, 2026-01)